大学職員、イギリスで学ぶ。

30代主夫のUCL留学体験記

出願準備について(志望校リサーチ編)

2018年末にイギリスに来て 、もうすぐ2年になります。

こちらに到着してすぐに始めたのは、「イギリスにはどのような大学があるのか?」についてリサーチをすることでした。

とはいえ、その時点では、エージェントに作成していただいた大学のリスト以外には、めぼしい大学名やコース名についてよく知らないため、何から始めたら良いか手探りの状態でした。

今回は、そんな右も左も分からない状態から、いかに情報を集め、志望校を決めていったか、そのプロセスについて記事にしてみたいと思います。

 

ステップ1:志望分野の明確化(キーワードの抽出)

 

まず自分が行ったのは、「自分が何を勉強したいのか」をできるだけ具体的にすることでした。

というのも、インターネットで大学やコースを探すのにも、自分の興味を一言で表すキーワードがない限り、本当に自分に合った大学・コースを検索するのが難しいからです。

 

私は日本にいた時に大学職員であったこともあり、漠然と「高等教育」について学びたいと思っていました。

しかし、高等教育の「何を」学びたいのかについては、そこまで明確ではありませんでした。

なので、"UK higher education master course"と検索して、ヒットする大学のコースの情報について読んでも、それが自分の興味・関心に合うものか確信が持てなかったし、ヒットする大学の情報の数も限られたものでした。

 

そこで私は、高等教育に関する文献(主に日本語)を読んで、自分が高等教育のどの領域について興味があるのかを明確にすることにしました。

いくつかの文献を読んで気づいたのは、自分は高等教育の「政策」、特に「国際化」についての政策に興味があるということでした。

このプロセスを経て、"education policy"や"internationalisation"といったキーワードも交えて再度検索をかけてみると、最初に検索した時とは得られる情報の種類や精度が全く違うことに気づきました。

 

私の場合、この「キーワードを複数持つ」というテクニック(?)は、自分の希望のコースを探す際に大変有効でした。

実際、私が進学することになったUCL IoEのComparative Educationコースは、コース名にhigher educationのというワードが含まれておらず、高等教育には直接関係ないように見えますが、複数のキーワードを駆使し、検索を重ねたうえで見つけることができました。

 

すでに自分の勉強したいことが明確で、関連するキーワードがホイホイ出てくる、といった状態の方であれば全く問題ないのですが、そうでない方は一度、自分の興味・関心を明確化するという作業をしっかりしておくと、後々その経験が活きてくると思います。

 

ちなみに、文献の検索をする時は、Google Scholar(https://scholar.google.com/)や CiNii(https://ci.nii.ac.jp/)を利用しました。

一個一個の論文を頭から最後までじっくり読み通すというよりも、ざっと目を通す中で「面白そうだな」というキーワードを探すつもりで、気軽に読むのがベターです。

 

ステップ2:とにかく検索

 

自分の研究したいことがある程度具体的になったら、キーワードを基に検索をかけていきます。

私が検索をしている時に重宝したのが、関連する大学院のコースをまとめて表示してくれるポータルサイトです。

www.findamasters.com

"Discipline"の欄に関心分野、"Location"の欄に大学の場所を入れれば、自分の希望する条件に合致している大学・コースの情報をゲットできます。もちろん、網羅し切れていない情報もあるのですが、掲載されているコースには大学Webサイトへのリンクや、Open Day(後述します)の情報なども載っているので、非常に便利なサイトであると思います。

 

あとは、候補となる大学がどのような評価を受けているかも重要ですよね。

有名どころのランキングだと、Times Higher Education(World University Rankings 2020 | Times Higher Education (THE))やQS(QS World University Rankings 2020: Top Global Universities | Top Universities)などがありますが、それと併せて私が見ていたのは以下のサイトです。

 

www.thecompleteuniversityguide.co.uk

 

こちらはTHEやQSとは異なり、イギリス国内の大学に対象を絞ったランキングですので、よりミクロな視点で各大学の評価を知ることができます。

とはいえ、こうしたランキングの公平性や信憑性については、それだけで論文が一本書けちゃうくらいにcontroversialなものでありますので、あくまで参考程度に捉えておくのが良いのではないかと思います。

 

ステップ3:大学とコンタクトを取る

 

出願もしないうちから大学とコンタクト?と思われるかもしれませんが、これが重要。

というのも、Webサイトやprospectus(入学案内)等の紙媒体だけの情報では、コースの内容が自分の研究したい分野と本当にマッチしているか、判断しきれないところがあるからです。

 

コンタクトを取る一つの方法としては、大学の教職員にメールを送ること。

たいていの大学のコースのWebサイトには、Contact Informationとして担当の教職員の連絡先が記載されていたり、専用のお問い合わせフォームが設置されていたりします。これらを利用し、「自分は○○について研究したいんだけど、このコースではそれが可能ですか?」と問い合わせてみることをオススメします。

ネックになるのは、英語でメールを書かなくてはいけないということですね(当たり前ですが…)。いきなりそれはハードルが高いという人は、エージェントに相談するのも一つの手です。こんな感じの質問をしたいんだけど、ということを伝えれば、代わりに大学の担当者に連絡を取ってくれたり、質問メールの書き方についてアドバイスをもらえたりするかと思います。

 

もう一つの手段としては、大学主催のオープン・キャンパスに参加すること。

こちらではこのようなイベントをOpen Dayと呼ぶことが多いですが、各大学で現在のコロナ禍においてもオンラインで開催されています。

教職員によるコース内容の説明に加え、Q&Aセッションの時間も設けられている場合が多いかと思うので、疑問を解消するにはもってこいの機会です。

私自身も、出願した大学には全て事前にOpen Dayに参加し、コース内容と自分の興味・関心にミスマッチがないかを確認していました。 もちろん、その場では確認がしきれない事項もありますが、その場合には適切な相談先を教えてもらえるので、効率的に情報収集ができることと思います。

余談ですが、私は当初、UCL IoEのComparative EdicationではなくEducational Leadershipという、学校運営に関わるコースを志望していました。そして、Open day参加時に教員に自分の関心分野が高等教育であることを伝えると、「このコースは初等・中等教育の学校運営に関する授業が中心で、高等教育について研究したい学生向けではないよ」と言われてしまいました。「やっちまった!」と思った反面、この時点でミスマッチに気付けたのは大きな収穫だったと今は感じています。

 

番外編:裏技的テクニック(Reading LIst)

 

以上までの内容が、私が実際に志望校選びのためにやっていたことなのですが、大学院に入学後に気づいた裏ワザ的なテクニックもご紹介します。

それは、各大学のReading Listを参照するというもの。

 

Reading Listとは、授業の中で読み進めていく本のタイトルを一覧にしたものです。

各大学により多少状況が異なる場合もあるかと思いますが、Web上にページを設置して、そこに授業で取り扱う参考文献が記載されている場合が多いです。

そして、このReading Listは、学外者であっても閲覧が可能なこともあります。閲覧方法としては、シンプルに"****(大学名) reading list"とGoogleで検索してみてもらえれば、Webページが出てきます。一例として、UCLのReading Listのリンクを貼っておきます。

ucl.rl.talis.com

例えば、”Education"というキーワードを入れて検索をかけてみると、教育に関する授業のタイトルが出てきます。リンク先に飛ぶと、授業で読む本のタイトルを一気に確認できます。

ログインをしないとその場で本の中身を見ることはもちろんできませんが、本のタイトルがわかれば、それをコピペしてググることで概要は把握できます(もちろん、Amazon等で買うことも可能です)。

こうした作業を通じ、コースのWebサイトで紹介されている授業内容(あまり詳細に書かれていないことが多いです)よりも圧倒的に多くの情報を得ることができます。もちろん、ここまで手のこんだリサーチをする必要はないという方も多くいるかとは思いますが、Webサイトを見ても、教職員に質問しても判断がつかないといった事態に陥った場合、リアルな授業内容について知るための一つの方法としては非常に有効かと思います。

 

自分としても、この方法をもっと早く知っていればと思いましたし、このような形でReading Listが一般閲覧可能であることは広く知られていないかと思いましたので、共有させていただきました。

 

おわりに

 

今回は、志望校のリサーチ方法について書かせていただきました。

コロナの状況の中でも、海外留学に向けて準備をされている方も多くいらっしゃるかと思います。

そうした方々に向けて、少しでも有益な情報が届けられたらと思い、筆を取りました。

次回も、留学準備(志望理由書の作成)について書いていきたいと思います。

 

らー